書店には様々な自己啓発本やビジネス本が並んでいます。私は時々本屋に行って、自分を鼓舞するのに役立ちそうな本をまとめ買いして読んでいます。先日面白い本を見つけたのでご紹介しようと思います。

　タイトルは「キミは怒る以外の方法を知らないだけ」。タイトルも「おっ？どういうこと？」と思いましたし、表紙には可愛らしい擬人化した犬が4コマ漫画で喋っています。早速買って読んでみました。

　よく親が子供を叱る時、恋人が相手に不満を言う時など「私は怒りたくて怒っているんじゃない、あなたがそうさせたのだ、あなたのためを思ってそうしているのだ」という文言を耳にしませんか？私もこれまでに何度も相手にそのセリフを言わせてきた気がしますし、自分でも言ったことがあると思います。

　しかし冷静に考えてみると「怒っている人は怒りたくて怒っている」ということが事実なのです。怒っているその感情の奥には「悲しい」「悔しい」「寂しい」など本当の気持ちが隠れているけれど、それを伝えずにただ単に「怒る」という表現方法を取ってしまうと、相手も反発する気持ちが芽生えてコミュニケーションが上手くいかないよ、ということをわかりやすく書いてあります。

　今はどうかわかりませんが、歯科業界は元々なぜか体育会系気質な業界です。人様の口の中のかみ合わせを何μmで調整をしたり、術者さえも目視できない根の中の治療をしたり、そういう細かく緻密な作業を誠実に確実に行うことを伝えていくために、厳しい師弟関係になったのではないかと個人的には考えています。

　それが一対一の師弟関係だけでなく、一対大勢の歯学教育の場でも当たり前となり、私が学生の頃には怖くて近寄りたくない先生、近寄りたくない専門講座がありました（のちに私はその最も近寄りたくない講座に入局しましたが）。だいたい各講座には「怒り役」と言われる怖い先生がいて、それをフォローする先生がいました。私は「そんな茶番なんかしなくたってちゃんとやるのに」と思っていました。ちなみに私が入局した講座は学生目線では全員が厳しく怖く感じました。

　そしてだいたいの怒り役が、学生がある程度学年が上がったり卒業すると「いやぁ、オレ怒り役だったからサ」と気さくに話しかけてきたりします。「怒り役」を演じて恐怖政治で統率を取ろうとするのもなんだかなと思いますし、時には本当にイライラを学生にぶつけていたのではと思うこともありました。でもそれはやはり、怒る以外の方法を知らないだけだったのだと思います。

　怒りの感情が湧いてきても、その奥にある本当の気持ちを探り、それこそを相手に伝えること。それが怒る以外の方法であり、それができる人が「素直な人」なのでしょう。

　４歳になった姪っ子と従妹との会話。

「ねぇ、そんなことしたらまた前みたいにケンカになっちゃうでしょ？だからやめて仲良くしない？ねぇ、○○ちゃん。」

「そうね！」

　ケンカに発展する前にその不穏な空気に気づくことができても、私は自分の我を通そうとしてしまいがちです。素直に「仲良くしない？」と提案できるところが素晴らしいと思います。

 　そういう人に私はなりたい。