短い夏も終わりのある日。

　日曜の夜に定岡が実家の用事で出かけるのを見送ると私はイソイソと準備を始める。どこか道中で温泉があって気が向いたら入れるようにお風呂セットをバックパックに入れ、運転中楽なようにモンベルのズボンとパーカー、スニーカー。そして以前美瑛に行った時に道の駅でもらってきた地図。あとはスマホとお財布があれば準備は完了。日曜は早く布団に入り、月曜はだいたい5時起床、5時30分に出発する。

　8月には最北端の宗谷岬へ行ったので、次は日高山脈の最南端、襟裳岬へ！

　北海道に来てから知り合った人たちは、私が「襟裳岬に行きたい」と言っても口を揃えてあの歌のように「何もないよ」と言う。何もなくても良いのだ。その地に行ってみたいのだから。

　襟裳岬周辺は風が強い。強風が名物らしい。突端まで行ってみたものの、肉眼では野生のゼニガタアザラシは見つけられなかった。風の館という施設に入るとアザラシに照準を合わせた望遠鏡がセットされており、覗いてみると波の間からぴょこぴょこ頭を出す様子が見えた。あんな岩の間で泳いでいてケガしないんだろうかと心配になったが、野生で生きていけるくらい逞しいんだから大丈夫なんだろう。

　そうしてみると水族館でコロコロ転がって愛嬌を振りまいているゴマフアザラシはだいぶ暢気な気がしてきた。いやしかし水族館には水族館のストレスがあるだろう。愛嬌は勝手にこちらが感じているだけでアザラシ側は物憂げに横たわっているのかもしれない。

　この後、帯広を経由し、モール泉で有名な十勝川温泉が近いなと思いながらも天気が不安定だったので結局寄らずに帰宅した。帯広方面は来年泊まりで来よう。

　帰省した時に襟裳岬に行った話をしたら、学生時代に父も行ったことがあるらしい。父が友人たちと行った時には霧が濃く、宿泊施設も予約していなかったので朝ごはんの前までという条件で宿の食堂に泊めてもらったとのこと。父がそんな旅をしたことがあるとは知らなかった。

　やはり岬は行ってみたくなるものなのだろう。